希望の唄

 夜中に窓を叩く音に目を覚まされた。「家が水に浸かってますよ!」昨夜から降り出した雨が増水して、裏の川が氾濫したようだ。お袋は身支度を済ませ、小さかった俺を連れて高台の映画館へと避難した。消防団にも所属していたオヤジはとりあえず、見回りに出掛けて行った。明け方4時、薄暗い雨降りの中、避難所への坂を登って行く。迎えの豆腐屋さんは朝の仕込みをしていた。映画館に着くと避難してきた人たちが何人もいた。湿っぽく窓さえない映画館の中は退屈だった。気を利かせて、映画を上映してくれるというサ..

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